古田織部
消息

Huruta Oribe
letter

掛軸　紙本　29,5cm×54,5cm（総丈112cm×56,5cm）箱入

作品の状態について

画面に少しオレがありますが、鑑賞に影響するオレではないと考えております。

　御隙之透ニいつにても御茶
　申度候。已上
芳墨本望之至候。先度は
人多候而不伺貴意をも候。今日
永右ニ御會之由候。然ハ新釜
之事、油断候て、遅参仕候。
山城州ニ蓋御入候由、此方へ
可給由、可被仰候。見申候て、釜
可申付候。新釜ハ蓋無之候へは、
数寄へハ難出御座候哉。能蓋次
第ニ頓而可申付候。何も以面上
可伺芳意候。恐惶
　　二月十九日　　重然(花押)
ふたゝゝとなき心をハ待給へ
　かまいてやかてまいらせそせん
　　　　　　　　　　古織部
(封) 昌叱老　　貴報　　重然
　
(読み下し)
芳墨本望の至りに候。先度は人多く候て、貴意をも伺えず候。今日永右に御会いの由候。然れば新釜の事、油断候て、遅参仕り候。山城州に蓋御入り候由、此方へ給うべき由、仰せらるべく候。見申し候て、釜申し付くべく候。新釜は蓋之れ無く候へば、数寄へは出し難く御座候哉。能蓋次第に頓而(やがて)申し付けべく候。何も面上を以て芳意伺うべく候。恐惶
二月十九日　　重然(花押)
ふたゝゝとなき心をば待ち給へ
かまいてやがてまいらせぞせん
(追而書)御隙の透にいつにても御茶申したく候。已上

(文意)
芳墨を賜り本望に存じます。前回は人が多くて貴意を伺えませんでした。今日永右にお会いするとのこと。それならば新釜の事、ゆっくりと遅れ参上いたします。
山城国に蓋が御入用とのことで、こちらへお持ちになるのであれば、仰せ付けください。
拝見して釜を(職人らに)申し付けます。
新釜にはまだ蓋がないので、数寄へは出し難いでしょうか。能蓋は順を追ってただちに申し付けます。面上の折に芳意を伺いたく存じます。　　　　　
　ふたふた(ばたばたの意)とむなしい心を我慢して待たれよ。
　必ずそのうちに進上しよう。　　
(追而書)時間の合間を縫っていつであっても茶会を催したいと思います。

　宛名の「昌叱」は連歌師の里村昌叱(1539－1603)のことです。父昌休の門人、里村紹巴に養育され、豊臣秀吉の命により連歌の宗家となり法橋に叙されました。黒田官兵衛と親交があったことでも知られています。里村家は昌休・昌叱・昌琢と続く連歌の一家です。
　これは織部が昌叱の書状に応えた、新しい茶釜についての返書です。この書状によれば、蓋と本体を別に誂えることが分かります。織部の書といえば一般に、左の払いの線が長く、文字を傾けた枯れた趣がある特異な書のことを言いますが、本状は珍しく深く沈着した書きぶりです。文中の｢永右｣は不詳ですが、｢永□右衛門守｣というような人物の省略形の呼称かも知れません。
　織部の花押には次の2種類あり、楕円部分左の書き方に違いがあります。
①筆を一度離してから、丸く筆を運ぶ。
②一筆で丸く筆を運ぶ。
隠居した慶長3年、もしくは道号｢金甫｣を授かった慶長4年を境に変化すると言われています。この書状は変化後の②の花押です。また、里村昌叱は慶長8年に亡くなります。したがって、本状は慶長3年頃から慶長8年(織部55歳から60歳)の間に書かれたものと考えられます。また、追而書の内容も隠居後の茶の湯三昧の生活を送る織部の心情が表れたものと言えるでしょう。
　織部と連歌との関係を示す珍しい文献史料の文中に昌叱の子昌琢の名が見られるものがありますが、この書状は昌叱に宛てており、織部と里村家との間に交流があったことを確かに示す貴重な史料と言えます。(Ｙ)

作家について

古田織部（1543～1615）は、千利休の没後、その後を受け天下一宗匠として秀吉から徳川家康、秀忠に仕え、視覚的かつファッショナブルな茶の湯で一世を風靡した。
窓を多く取り広さも十分な茶室や、形はゆがみ躍...

販売と買取（鑑定・査定）について

当店では古田織部などの書画・掛け軸を販売および買取（鑑定・査定）しています。詳しくは下記の各バナーをクリックしてください。