一筆斉文調 (いっぴつさいぶんちょう)
一筆斉文調(生没年不詳)は、狩野派の絵師で石川幸元の門人。明和から安永元年にかけ、細判や中判の役者錦絵を多数制作した。勝川春章とともに、役者似顔絵を創始し、形式化した鳥居派の役者絵に対抗し、役者の容貌の個性を表現するという新機軸を打ち出した。敵役の役者を描く際には、見得をきる一瞬の表現と姿勢を的確にとらえて役柄の特徴を表現し、女形や遊女の場合は、個性は強調せず、春信の影響を多分に受けた可憐な表情のすらりとした立ち姿で描き出した。
安永元年には、より写実的な春草に人気が移っていったためか、役者絵制作をやめている。