新島襄
柴原宗助宛書簡

Niijima Jo
letter

掛軸　紙本　16cm×54,5cm 台紙33cm×62,5cm(総丈120cm×65cm) 松山義則箱書

作品の状態について

画面、表装ともに良い状態です。

粛啓陳者今午后
五時比より坂田先生と
貴兄之御来車を仰き
三本木茨木屋ニ而
晩餐を奉呈候間
御操合御光来賜らハ
幸甚之至ニ不堪候
右得貴意度
　　　　　艸々敬具
　五月廿五日　新島襄

柴原宗助兄
　　　　梧下

尚々四時半比より拙宅へ
御越し被下候ハ丶御同行
仕度候尤坂田先生ニハ
直ニ三本木ニ御越被下候様
申上置候

〈読み〉
粛啓　陳者(のぶれば)今午后五時比(ころ)より坂田先生と貴兄の御来車を仰ぎ、三本木茨木屋にて晩餐を呈し奉り候間、御操合(おくりあわせ)御光来賜らば幸甚の至りに不堪(ふかん)候。右 貴意を得(え)度(た)し。艸々敬具。
　五月廿五日　新島襄
柴原宗助兄
　　　　梧下
尚々、四時半比(ころ)より拙宅へ御越し下さり候(そうら)わば、御同行仕(つかまつ)り度(た)く候。尤(もっと)も坂田先生には直に三本木に御越し下され候様、申し上げ置き候。

◯陳者　さて申し上げますが、の意。候文などの手紙で、時候の挨拶の後、本文の書き出しに用いる言葉。　◯来車　車に乗ってくること。転じて、相手の来訪を尊敬していう語。来駕。　◯操合　時間などをやりくりして都合をつけること。「操合」は誤用で、正しくは「繰合」。　◯光来　他人の来訪の尊敬語。おいで。御入来。　◯梧下　手紙の宛名の脇付に用いる語。机下。梧右。

〈人物について〉
◯柴原宗助(1847−1909)　備中国後月郡井原村(現在の岡山県井原市井原町)の庄屋を務めていた柳本家に生まれた宗教家、地方政治家、教育者。幼いとき、大坂に出て薬屋に勤めたり、京都へ出て同志社で新島襄に学んだりした。その後、高梁の柴原家の養子となるが、キリスト教の信者となって高梁のキリスト教会設立に尽力した。

◯坂田先生　坂田警軒(1839−1899)のこと。備中国(岡山県)に生まれた漢学者、政治家。明治元年に興譲館館長となり、地域のの子弟を育てた。岡山県会議員を経て、明治23年衆議院議員に当選。同志社や慶應義塾、東京高等師範などの講師を勤めた。名は丈、字は夫卿。通称は初め丈助、のちに丈平。　

〈解説〉
　この書簡は、明治22年(1889)5月25日、夕食に招待するために柴原宗助に宛てたもので、「坂田警軒先生とあなたを招いて、本日午後5時より三本木の茨木屋で夕食をするので、ご都合をつけて是非おいでください。(追伸)4時半頃に拙宅へお越しくだされば、同行いたしたく存じます。なお、坂田先生には直接三本木にお越し下さいますよう申し上げておきます」という主旨です。新島襄全集編集委員会編『新島襄全集』４・書簡編Ⅱ(同朋舎出版、平成元年、139−140頁)に掲載される史料です。新島は明治23年1月23日に亡くなるので、この書簡は亡くなる約7ヶ月前の晩年の筆跡と言えます。
　柴原宗助は福沢諭吉・新島襄の知遇を得て、坂田警軒と交流があったことで知られていますが、この書簡からもその関係を窺えます。新島、坂田、柴原の3人が会した夕食はどんな話に花が咲いたのだろうか。
　また、新島は坂田にも同様の書簡を送っていたようで、坂田の返書が同志社大学の新島遺品庫(目録番号0788)に収蔵されています。(デジタル資料を閲覧可能)(Ｙ)

作家について

新島襄（1843～1890）は、江戸に生まれた明治時代の教育家。
元治元年(1864)、箱館からアメリカに密航してアーモスト・カレッジで理科学を学び，アンドーヴァー神学校でキリスト教の教義に接し、さらに岩倉使節...

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