富岡鉄斎
東坡笠屐図
Tomioka Tessai
Su Shi
掛軸 紙本 67cm×33cm(総丈160cm×47cm) 共箱 二重箱入 鉄斎研究所載品
作品の状態について
画面に少しオレがありますが、鑑賞に影響するオレではないと考えております。
表装は良い状態です。
園田湖城旧蔵品。
予家藏絹本東坡先生笠屐啚
當是元人筆其上題曰東坡一日訪黎
子雲凃中値雨乃於農家假篛笠
木屐載履而歸婦人小兒相隨争咲
邑犬爭吠東坡曰咲所怪也吠所怪也覺
坡僊瀟洒出塵之致六百秊後猶可
想見會予訂補施註蘓詩成因撫
其象於巻端以識嚮往葢
康熙己卯六月 漫堂宋犖
皇大正九年三月鐵齋外史摹
時年八十又五
(読み)
予の家に絹本の東坡先生笠屐図を蔵す。当(まさ)に是れ元人の筆なるべし。其の上に題して曰く。東坡、一日、黎子雲に謁す。涂中、雨に値(あ)ひ、乃(すなは)ち農家に於いて篛笠木屐を仮り、載(いただ)き履きて帰る。婦人小児、相随ひて争ひ咲(わら)ひ、邑犬争ひ吠ゆ。東坡曰く、怪しむ所を咲ふなり、怪しむ所を吠ゆるなりと。坡仙が瀟洒出塵の致(おもむき)、六百年後、猶ほ想見すべきを覚ゆ。会(たまたま)予、施註蘇詩を訂補して成る。因って其の象(かたち)を巻の端に撫(ぶ)し、以て嚮往を識(しる)す。蓋(けだ)し康熙己卯六月(二日なり)。漫堂宋犖。
皇大正九年三月、鉄斎外史摹す。時に年八十又五。
(大意)
私の家に絹本の東坡先生笠屐図を所蔵しているが、きっと元人の絵だろうと思う。その図上の題文に次のように書いてある。「海南島に流されていた蘇東坡が、ある日、その土地の黎子雲という人に会いに行き、途中で雨にあった。そこで農家で、たけのこ笠と下駄を借り、その笠をかぶり、下駄をはいて帰ってきた。女子供が、後からついて来て、げらげら笑い、村中の犬が争って吠えた。東坡は『女子供が笑うのは、私を怪しいと思って笑うのだろう、犬が吠えるのは、私を怪しいと思って吠えるのだろう』と云った。」東坡の胸中が、さっぱりとしていて、世俗を超越したおもむきは、600年後の今日においても、なお想像することができるのを覚える。たまたま私が宋人施元之と施宿父子の作った蘇東坡詩集の註に訂正増補を加えていたのが完成した。そこで東坡の肖像を巻の端に模写して、昔をしのぶ記念とした。けだし康熙38年6月2日である。漫堂宋犖。
◯篛笠 竹の皮で作った笠。たけの子がさ。 ◯木屐 木製のはきもの。木ぐつ。 ◯邑犬 村里に棲む犬。 ◯瀟酒 さっぱりして清らかなさま。すっきりとあかぬけたさま。 ◯出塵 俗世間から抜き出る。 ◯想見 様子を推し量る。思い浮かべる。 ◯施註(注)蘇詩 書名。四十二巻。宋・施元之撰。清・邵長蘅、李必恒補。馮景続注。ほかに東坡年譜一巻、王注正譌一巻、蘇詩続補遺一巻を附す。施元之注は宋代にあって善本と称されたが伝本が少なく、康熙の時、宋犖がその残帙十二巻を得、その闕巻を補った。
(印章)
・白文方印「富岡百錬」 大正3年(1914) 羅振玉刻
・朱文方印「東坡同日生」 中華民国6年(1917) 呉昌碩刻
・白文長方印「修竹吾盧」 明・万暦年間 何震刻
・朱文方印「鉄斎外史」 中華民国6年(1917) 呉昌碩刻
(参考)
『好古堂書畫記』巻上に元人張逵の東坡笠屐図に元人魏了翁の題した賛を載せてあるが、宋犖の文の「東坡在儋耳」以下「吠所怪也」までは魏了翁の文を引用したもの。
● 箱書 ●
余以天保七年丙申十二月十九日生於京都宛與宋東坡同生日故有所
感於蘓因屢寫蘓子像者葢亦一癖矣此像摹元人筆而引首印
則何雪漁鎸富岡百錬清儒官羅振玉鎸鐵齋外史及東坡同生日(日生)
之二印中華民國呉昌碩所刻 大正九年六月 為湖城篆士 八十有五叟 鐵齋自記
(読み)
余は天保七年丙申十二月十九日を以て京都に生る。宛(あだか)も宋の東坡と生日を同じうす。故に蘇に感ずる所有り。因って屢(しばしば)蘇子の像を写すは、蓋し亦た一癖なり。此の像は元人の筆を摹す。而して引首印は則ち何雪漁の鐫。富岡百錬(印)は清の儒官羅振玉の鐫。鉄斎外史及び東坡同日生の二印は、中華民国の呉昌碩が刻する所なり。 大正九年六月。湖城篆士の為にす。八十有五叟 鉄斎自ら記す。
【解説】
たけのこ笠を被り、両手で裾を持ち上げて立つ蘇東坡(1036−1101)の姿を画面中央にかわいらしく描く本図は、鉄斎が85歳の時に交流のあった篆刻家園田湖城(1886−1968)に贈ったもので、『鉄斎研究』第63号に収載されています。落款印に用いられている「東坡同日生」の印は、蘇東坡と同じ12月19日生まれであったことを喜んだ鉄斎が、清王朝の最後の文人として知られる呉昌碩(1844−1927)に依頼して刻してもらったものです。
鉄斎は、若い頃より宋代の文人蘇東坡を敬愛し、詩文書画に学び、蘇東坡に取材する作品を数多く遺しましたが、その中でも、彼がとりわけ好んだ主題がこの「東坡笠屐図」です。「東坡笠屐図」は、蘇東坡が海南島に流されていた時のある日、黎子雲という人物を訪ねての帰途、雨にあったので、農家からたけのこ笠と下駄を借りて帰ったところ、女子供がその姿を見てうしろから笑いながらついてきて、犬までもが群がってきて吠えたという逸話をもとにして描かれています。(Y)
作家について
富岡鉄斎(1836〜1924)は、京都に生まれた日本画家。
「万巻の書を読み 万里の道を行く」の座右の銘を実践した鉄斎の作品は、壮大なスケールと存在感を放っている。
画は勿論、国学・儒学を修め、幕末には...
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