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高遊外
消息
Kou Yugai
letter
掛軸 紙本 15,3cm×64cm(総丈124cm×66,5cm) 福山暁庵箱書
作品の状態について
画面、表装共に良い状態です。
貴翰拝讀仕候如来
命久々疎濶之至御座候
泉州江御越近日御歸
之由泉州之行ハ愚道
咄ニ承申候御無事ニ御歸
珍重奉存候然ハ去年
拙墨御望被成候御方
岡田公為右謝意被入
御念候珍菓御恵贈忝
敬登仕候併野拙分不
相應之儀近来迷惑ニ
御座候乍去嘗味可仕と
楽申候先方江宜敷御礼
被仰越可被下候野拙儀
去冬已来之腰痛于今
日前ニ而執筆太儀ニ而
回答麁略ニ御座候宥
恕可被下候尚其中期
面晤可申申宣候 頓首
三月十一日
泉州之各位御傳詞
之由忝承知仕候御序
之節宜敷奉頼候 已上
新井文叔様 高遊外
〈読み〉
貴翰拝読仕(つかまつ)り候。来命の如(ごと)く久々疎闊の至(いたり)御座候。泉州へ御越(おこし)、近日御帰(おかえり)の由(よし)、泉州の行は愚道咄(ぐどうばなし)に承(うけたまわ)り申し候。御無事に御帰、珍重存じ奉(たてまつ)り候。然(しから)ば去年 拙墨御望(おのぞみ)成(な)され候。御方岡田公、右謝意として御念を入られ候。珍菓御恵贈、忝(かたじけな)く敬い登り仕(つかまつ)り候。併(しかし)ながら野拙(やせつ)分不相応の儀、近来迷惑に御座候。去り乍(なが)ら嘗味仕(つかまつ)るべしと楽しみ申し候。先方へ宜敷(よろしく)御礼仰(おお)せ越され下さるべく候。野拙の儀、去冬已来の腰痛。今日より前にて執筆。太儀にて回答麁略(そりゃく)に御座候。宥恕(ゆうじょ)下さるべく候。尚、其中面晤(めんご)に期(ご)し宣(の)べ申し申すべく候。頓首。
三月十一日
泉州の各位、御伝詞の由(よし)、忝(かたじけな)く承知仕(つかまつ)り候。御序(おついで)の節、宜敷(よろしく)頼み奉(たてまつ)り候。已上。
新井文叔様 高遊外
〈要旨〉
お手紙拝読いたしました。あなたが(手紙に)お書きになった通り、久しくお会いしていません。泉州へ行き、近頃お戻りになった趣旨は、泉州の行が愚道であったという小咄でお聞きしました。御無事にお戻りになったことお祝い申し上げます。
それならば、昨年に揮毫依頼してください。御方の岡田公が、そのお詫びとして丁寧に気遣って下さいました。珍菓をご恵贈いただけること、大変ありがたく存じ(頂戴しに)お伺いします。しかし、小生には分不相応であると、この頃になって戸惑っております。しかしながら、嘗味すること楽しみにしております。先方(岡田公)へふさわしい御礼を(持って行かせるように)お命じください。
小生は去年の冬以後ずっと腰を痛めていますので、今日より前の(腰の具合の良かった)日に執筆しました。それは骨の折れることで、あなたのご依頼に対しておろそかになりました。大目に見てお許しください。近日中にお目にかかってお話しいたします。
〔追伸〕泉州の皆様方のご伝言の件は、かたじけなく承知いたしました。ちょうど良い機会がございましたら宜しくお頼み申し上げます。
◯貴翰 相手の手紙を敬っていう語。返書の冒頭によく使用する。 ◯来命 人の手紙の内容を、その人を敬っていう語。 ◯疎闊 久しく会わないこと。疎遠なこと。 ◯泉州 和泉国の別称。今の大阪府の南部。 ◯珍重 めでたいこと。祝うべきこと。 ◯御念 相手が心にかけてくれることを敬っていう語。お心遣い。 ◯珍菓 珍しい菓子。または、珍しい食物。 ◯恵贈 金品を贈られることを、相手を敬っていう語。 ◯野拙 自分の謙称。拙者。小生。 ◯分不相応 その人の身分や能力に相応しくないこと。 ◯近来 近頃。この頃。 ◯嘗味 味わう。 ◯太儀 大変なこと、苦労という意。 ◯麁略 物事を充分に手を尽くさず扱うこと。おろそか。ぞんざい。なげやり。 ◯宥恕 大目に見て許すこと。 ◯面晤 面会のこと。
〈解説〉
煎茶の祖・茶神と称される高遊外売茶翁が新井文叔という人物の書状に応えた返書です。文面によれば、文叔の揮毫依頼に対し、腰痛になる前の去年に依頼してほしかったと述べながらも、どうにか執筆したようです。他に、御方の岡田公の気遣いで珍菓をご恵贈いただけることに戸惑う一方、賞味する事を楽しみしているとも記しています。
署名に「高遊外」と記していることから、還俗して高遊外と称した寛保2年(1742)68歳以後に書かれたことが分かります。また、宝暦5年(1755)81歳の9月4日、高遊外は愛用の茶道具を焼却して売茶生活をやめ、以後は揮毫により生計を立てたと言われています。さらに、伊藤若冲が売茶翁像を描き、その画面上に高遊外自身が83歳の時に賛を記した《売茶翁像》に付属する二通の書簡には、「近年衰えてきた」「痛い腰をかがめて」などの内容が見られるそうです(『生誕三百年 同い年の天才絵師 若冲と蕪村』[サントリー美術館、平成27年]の作品解説No.152を参照)。本消息においても「去冬已来の腰痛」と記されています。したがって、本消息は腰痛に悩まされていた81歳以後に書かれたものと思われます。
箱書を記した福山暁庵(1881−1946、道号は朝丸、法諱は広輝)は黄檗宗の僧で、萬福寺法林院に売茶翁を祭る売茶堂を建立し、数十年にわたって売茶翁研究を行った人物です。著に『売茶翁年譜』『売茶翁』があります。(Y)
作家について
高遊外(1675-1763)は、肥前に生まれた黄檗宗の僧、煎茶人。煎茶道の祖とされており、売茶翁の名でも知られる。諱は元昭、道号を月海、高遊外は号。出家して竜律寺の化霖道龍や、黄檗山万福寺の独湛性瑩らに教えを...
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