隠元隆琦
一行書

Ingen Ryuki
Calligraphy

掛軸 紙本 125cm×34cm(総丈215cm×49cm) 二重箱入

作品の状態について

一文字目に一箇所入墨があります。
表装上下上部分に少しイタみがあります。
どちらも鑑賞に影響するものではないと考えています。

寶鑑炤無私
　　黄檗隠元書
(読み)
宝鑑 私無く炤す。　黄檗隠元書。　

○宝鑑　鏡の美称。また、月のたとえ。○炤　明るく照らす。｢照｣に通じる。

(大意)
月は私情を交えず明るく照らす。

　『礼記』では孔子と弟子である子夏との問答で、「三無私」についてのやり取りがあります。孔子は子夏の問いに対して｢天無私覆、地無私載、日月無私照。｣(天に私覆無く、地に私載無く、日月に私照無し。)と答えています。本作に揮毫された語は、この『礼記』の議論を根拠としていると考えられ、恩沢の施されることが公平無私であることをたとえています。
　｢黄檗の三筆｣と称される隠元隆琦・木庵性瑫・即非如一などの墨跡は煎茶席に珍重されました。隠元は宋の蔡襄や明の董其昌の書を学んだといわれ、文人的な書風から出発して、気品に加えて独自な力強さを持つ、いわゆる黄檗流という書風に至りました。本作はゆったりと落ち着いた筆運びで書かれ、筆力に富み、肉太の骨格確かな書風からは温かい包容力を感じさせます。(Ｙ)

作家について

隠元隆琦（1592〜1673）は、黄檗宗の禅僧。
中国福建福清にある黄檗山萬福寺の住持であったが、承応3年（1654年）に中国より長崎に渡来し、彼とその随行の僧たちは、明末の新たな禅宗を日本に広めるだけでなく、...

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