頼山陽
書幅
Rai Sanyo
Calligraphy
掛軸 27,9cm×76,2cm(総丈123cm×91,4cm) 二重箱入
作品の状態について
画面に少アレ、オレがありますが、鑑賞に影響しないと考えています。
表装は良い状態です。
少陵野老呑聲哭
春日潛行曲江曲江頭
宮殿鎖千門細柳新
蒲爲誰綠憶昔霓
旌下南苑々中萬物
生顏色昭陽殿裏第
一人同輦隨君侍君
側輦前才人帶弓
箭白馬嚼齧黄金
勒翻身向天仰射雲
一箭正墜雙飛翼明
眸皓齒今何在血汚游
魂歸不得清渭東
流劍閣深去住彼此無
消息人生有情涙沾臆
江水江花豈終極黄昏
胡騎塵滿城欲往城
南忘南北
庚寅九月既望録為
子徳雅契
襄
〈読み〉
少陵の野老 声を呑みて哭(こく)す、
春日潜行す 曲江の曲(くま)。
江頭の宮殿 千門鎖(とざ)す、
細柳 新蒲 誰が為にか綠なる。
憶ふ昔 霓旌(げいせい)の南苑に下りしを、
苑中の万物 顏色を生ず。
昭陽殿裏 第一の人、
輦(れん)を同じくし 君に随って 君側(くんそく)に侍す。
輦前(れんぜん)の才人 弓箭(きゅうせん)を帯び、
白馬は嚼嚙(しゃくげつ)す 黄金の勒(くつわ)、
身を翻して天に向かって 仰ぎて雲を射る、
一箭(いっせん) 正に墜(お)つ 双飛翼(そうひよく)。
明眸皓齒(めいぼうこうし) 今何(いづ)くにか在る、
血汚(けつと)の遊魂(ゆうこん) 帰り得ず。
清渭は東流し剣閣は深し、
去住(きょじゅう)彼此(ひし) 消息無し。
人生情有り 涙臆(むね)を沾(うるほ)す、
江水江花 豈に終極あらんや。
黄昏(こうこん)胡騎(こき)塵城(ちりしろ)に満(み)つ、
城南に往かんと欲して南北を忘る。
庚寅九月既望、子徳雅契の為に録す。
襄
〈現代語訳〉
曲江のほとりの哀しみ
もとは少陵の出の田野翁、声を飲みこんで泣く。春の日にこっそり曲江の曲(くま)はと足を運ぶ。
曲江のほとりの宮殿は千門みなひっそりと閉ざされ、柳の細い枝も蒲の新芽も誰のために青々としているのか。
思い起こせばその昔、虹の御旗がこの南苑に御幸され、苑のなかは一木一草、生気に輝いていた。
昭陽殿のなか随一のお人は、同じ輩(れん)に乗って君に従い君の側らに侍る。
輩の前の才人は弓箭を身に帯び、白馬は勒(くつわ)を口に銜える。
身を翻して天に向かい仰ぎ見て雲に矢を放てば、一本の矢でまさしく並ぶ飛ぶ二羽の鳥を射落とした。
澄んだ瞳、輝く歯、それは今いずこ。血を汚れた霊魂はさまよい続けて帰れない。
清らかな渭水は東はと流れ、剣閣は深い山のなか。去る者とどまる者、互いに消息はない。
人生にあるのは情け、涙に胸が濡れる。曲江の水も曲江の花も尽きる時はない。
たそがれに闊歩する胡の騎兵、その粉塵が町に
立ち籠める。城南に行こうとして南も北も分からない。
〈詩解〉
至徳二載(757)春、長安軟禁中の杜甫はそっと抜け出して曲江を訪れる。かつては長安の繁華がらとりわけ華やかに繰り広げられたその場が、今はさびれて人影もない。その寂寞のなかに往時の情景を幻視する(5~12句)。我に返れば、玄宗は蜀へ去り楊貴妃はむごい死。人の世の事どもにかく心を動かしても、周囲の自然は平然と永遠の営みを繰り返す。その対比のなかで詩人は昏迷のなかに沈み、茫然と立ち尽くす。理の表白を抑え、淡々と叙述する。
(以上、川合康三著『漢釈漢文体系 詩人編6 杜甫 上』より抜粋)
〈解説〉
子徳(彦根の足軽村田某の子である嚴山の子か。嚴山は山陽に師事したが、間もなく没した。)という者のために、杜甫の七言古詩「哀江頭」を書した作品。「庚寅九月既望、子徳雅契の為に録す。」という識語があることから、天保元年(1830)9月16日の夜、つまり山陽最晩年の51歳の時に自書したものと分かります。既望(きぼう)は、陰暦16日の夜を意味します。
「哀江頭」は、軟禁中の杜甫が春を迎えたある日に曲江のあたりを歩きながら玄宗の治世の花やかだった昔を追想し、変わり果てたこの長安の姿を嘆きつつ作った詩。有名な「春望」の詩と同じ時期の作品です。(Y)
作家について
頼山陽(1780~1832)は、頼春水の長男。広島藩の藩儒となった父から、厳しく育てられた山陽は若い頃から奇行に走り、やがて脱藩、京へ出て塾を開いた。山陽の周辺には木米、田能村竹田、岡田半江、浦上春琴など...
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