11/2 木曜日 ~ 11/16 木曜日
【終了しました】
次回は3月ごろに開催予定です。
詳細が決まり次第
ホームページにてご案内いたします。
11月2日より松本松栄堂 東京オフィスにて
「殿村藍田」展を開催いたします。
今回は大小さまざまな作品31点を
ご紹介いたします。
「殿村藍田」展を開催いたします。
今回は大小さまざまな作品31点を
ご紹介いたします。
殿村藍田 - プロの仕事
「いくら曲がってても私の行書は芯が通ってる」
「いくらうねってもピンとなる」。藍田はみずからこう語っている。
芝の石屋に生まれた藍田は、建築を学んでいた。構造力学などは得意だったらしい。うねり暴れた行が書き終えてみるとぴたりと紙面に収まる。これは建築出身だからだという。日本芸術院賞を受賞した、「十二楼」という大きな書き出しではじまるあの作を思い浮かべれば合点がいく。
学校を卒業して徴兵されるまで、手持ちぶさたとなった九ヶ月の間に藍田は書にのめりこんだ。はじめ大角芳園の手本を習い、豊道春海に師事した藍田だが、断続的に三度にわたった兵隊生活もあって、実質的に独学した期間が長い。衛生兵だったことが幸いして、赴任先でも筆を執ることができた。
書を習いはじめてまもないころ、日本橋にあった守尾瑞芝堂で羊毛筆の邵芝巌と何紹基の法帖を手に入れた。これを皮切りに、米芾や蘇東坡といった宋人、さらには董其昌を経て八大山人や王鐸、鄭板橋といった唯美的な表現に一気に惹きつけられていく。この肌合いは、藍田の時に激情的で没頭型の性質にしっくりときたのであろう。富岡鉄斎や良寛にも興味を抱いたが、その観念的な面は採らず、あくまで都会的で知性の勝った表現を専らにする。
昭和四十二年の日展内閣総理大臣賞は仮名の小品で受賞した。行草の名人であることは、いまなお誰もが認めるところである。一方で、十二世紀末を彷彿とさせる仮名も藍田の手にすんなりと馴染んだ。これもまた現代の鬼才である鈴木翠軒の激賞もその手腕を物語っている。漢字と仮名、日中の垣根を藍田は軽々と越えていく。
今回は小品を中心に、三十点あまりが展観されるという。半数以上は仮名の掛幅や額である。
昭和四十二年の日展内閣総理大臣賞は仮名の小品で受賞した。行草の名人であることは、いまなお誰もが認めるところである。一方で、十二世紀末を彷彿とさせる仮名も藍田の手にすんなりと馴染んだ。これもまた現代の鬼才である鈴木翠軒の激賞もその手腕を物語っている。漢字と仮名、日中の垣根を藍田は軽々と越えていく。
今回は小品を中心に、三十点あまりが展観されるという。半数以上は仮名の掛幅や額である。
藍田の作に大小の差を言う意味は全くないだろう。いずれも何度かにわたって開催された個展の出品作とみられるが、そうした出品履歴もあまり気にしなくていい。手のひらほどの作も、長い巻子本も、どんな展覧会に出品したものも同じ温度で制作されている。
額の大半は岡村多聞堂の制作、掛幅にも藍田の意が尽されている。奔放に揮われた筆も実は繊細な感覚に裏打ちされていて、こうした仕立てにも手抜きがない。
稀代のテクニシャンで、いわゆるお習字的な教条主義や古拙の世界への逃避がない。プロの仕事そのものである。近来、彫刻でも絵画でも、伝統的な技法をきちんと手中にした作家に注目が集まっている。古典的な藍田の書には求めずとも現代性があり、和漢を超える普遍性がある。今日もその魅力が失せることはない。
額の大半は岡村多聞堂の制作、掛幅にも藍田の意が尽されている。奔放に揮われた筆も実は繊細な感覚に裏打ちされていて、こうした仕立てにも手抜きがない。
稀代のテクニシャンで、いわゆるお習字的な教条主義や古拙の世界への逃避がない。プロの仕事そのものである。近来、彫刻でも絵画でも、伝統的な技法をきちんと手中にした作家に注目が集まっている。古典的な藍田の書には求めずとも現代性があり、和漢を超える普遍性がある。今日もその魅力が失せることはない。
(大東文化大学 高橋利郎)
殿村藍田 略年譜
大正2年(1913) |
8月2日東京に生まれる 本名は喜代松、藍田と号した 除隊後、豊道春海につき学書 |
---|---|
昭和25年、28年 (1950、1953) |
日展特選受賞 |
昭和37年(1962) |
第三次訪中日本書道代表団の一員として 中国訪問 |
昭和42年(1967) | 日展内閣総理大臣賞受賞 |
昭和52年(1977) | 第八回日展出品作「薛逢詩」で日本芸術院賞受賞 |
昭和55年(1980) | 神奈川県文化功労者として受彰 |
昭和59年(1984) | 欧米巡回の日本書法巨匠展に出品 |
昭和63年(1988) | 北京・中国美術館にて個展開催 |
平成4年(1992) | 上海・上海博物館にて個展開催 |
平成5年(1993) | 西安・陝西歴史博物館にて個展開催 |
平成9年(1997) | 上海博物館にて個展開催 |
平成12年(2000) | 7月23日逝去 享年86歳 |
漢字
- 《軸》吉祥大来
- 《軸》黄山谷句 平成元年季夏
- 《軸》鶴門大吉
- 《額》十句観音経
- 《額》万寿千祥
- 《巻子》四友詩 昭和52年仲夏
かな
- 《軸》四季の山姥 昭和53年4月
- 《軸》新古今集 梅 昭和54年新春
- 《軸》新古今集 梅 昭和54年新春
- 《軸》新古今集 春の歌 昭和55年4月
第19回青藍社展 - 《軸》橘の歌 昭和56年秋日
- 《軸》新古今集 春五首
- 《軸》新古今 賀歌 伊勢
- 《軸》和漢朗詠集 花橘・蓮・蝉のうた五首
- 《額》拾遺和歌集 みずのおもに
- 《額》新古今和歌集 てりもせず
- 《額》古今和歌集 あさみどり
- 《額》古今和歌集 恋歌
- 《額》古今集ほか
- 《額》和漢朗詠集 藤のうた
- 《額》新古今和歌集 野分せし
- 《額》和泉式部集 いのちあらば
- 《額》和泉式部集 くろかみの
- 《額》ふるさと
- 《巻子》平家物語 横笛 昭和57年9月
- 《折帖》新古今集 春のうた
画
- 《軸》墨梅 昭和56年歳旦 竹翠展
- 《軸》梅花 昭和56年秋日
- 《軸》墨梅 第31回青藍社展
- 《額》梅 画賛
- 《額》梅花
会場:松本松栄堂 東京オフィス
〒103-0027東京都中央区日本橋3丁目
8-7坂本ビル3F
営業時間:10:00 - 18:00