Tomioka Tessai
富岡鉄斎 展
2018.11.01-2018.11.15
松本松栄堂 東京オフィスにて
「富岡鉄斎」展を開催させて頂きます。
今回は富岡鉄斎(1836~1924)が80歳以降に描いた晩年作を中心に展示致します。
富岡鉄斎は80歳をすぎて更に勢力的に作品を描き続けました。
20世紀に活躍した日本画家の中で、
最も世界的な評価を受け続ける富岡鉄斎の作品の素晴らしさを少しでもお伝えできたら幸いです。
近代日本画の巨匠、富岡鉄斎の筆致はどこまでも自由で闊達、
強靭でありながら情趣満ち、ところ狭しと東洋芸術の粋が横溢する。また、その躍動感と気満の中に心を落ち着くなんとも不思議な気持ちも併せて体感する。
これもまた東洋芸術の粋なのではないか。
元来、篤学の家系であったことから幼少より学問に励み、幅広く学問を修めた。若い頃に確かで数多くの学問や知識を手に入れたことは、鉄斎芸術の基盤の構築に大いに役立った。
また、大田垣蓮月をはじめ貫名菘翁、山本梅逸ほか当時の文人芸術家たちとも交流した。この点においても鉄斎の芸術の方向性を確固たるものにした。
董其昌のことば「万巻の書を読み、万里の道をゆく」を座右の銘とした鉄斎。その言葉通り和漢古今の書籍を学究する執着は凄まじく、書においても董其昌、顔真卿や金冬心、鄭板橋、篆隷の古拓も狩猟したが、その技巧に執着することなく用筆や造形は書体書風に捉われることなく多様多彩に展開した。
この独自の章法を支えたのは若年からの確かで多様な学書からなるものであろうが、その終着点として技法を超越し率直な自己表現を主とした「平淡天真」の境地に至っている。
蘇東坡をこよなく愛したのはこのあたりの理想郷に共鳴し、憧憬したのであろう。同じ誕生日であることも運命である。
生き様においても制作においても、学問・思想・芸術の修業によって育まれた人間性とそれらに真摯に向き合ってきた自信に裏付けされた「信じる道」を独歩し、到達できた境地であろう。中年から晩年にかけての作風には、その道を直に表現するような作品が数多く生み出される。それは強靭な個性で鉄斎の息使いが伝わる無二の印象を受けるが、そこに和漢の先達の影が見え隠れし、鑑賞者の心眼が彷徨する。鉄斎の手導きで彼の歩んできた道を共に進んでいるかのようであり、特異で深遠な魅力で楽しませる。鉄斎の生涯のすべてが昇華され、筆致に凝縮されているからであろう。
特に80代半ば以降はその気迫に満ちた筆致に神韻が加わる。もはや何ら拘ることもなくすべてを筆先に集中させ、一気呵成に書き上げられる作風となり、墨色も一段と鮮やかなとなる。潤筆の墨溜まりや渇筆、筆先の乱れもすべてを味方にし、豪放無比で変幻自在な表現は圧巻である。特出すべきは、その造形や線のすべてが「自然」に表現されていることである。
古来より芸術における天然と工夫の関係に先人は多くの時間を割いたが、鉄斎は晩年の書画においてその答えの出しているかのようである。おそらく東洋芸術において如何に自然な形で表現が完結しているか、という点はとても重要であろう。
多くの書画の名品はこの魅力を備えている。これが東洋芸術の粋なのではないか。数多くの学書修業の末にこの粋を手中に収めた鉄斎は、紛れもなく近代東洋芸術の巨匠となったのである。
本展は、その画業の充実した80代以降の優品が並ぶ。
墨色鮮やかで生命力あふれる情熱と自然な気韻、粋を味わってほしい。また、最晩年の作である牧童の図もその年紀の線質と共に必見である。
(書家 尾西正成)
会場
松本松栄堂 東京オフィス
〒103-0027
東京都中央区日本橋3丁目8-7坂本ビル3F
担当者電話番号:080-9608-7598
Mail:info@matsumoto-shoeido.jp
営業時間:10:00 - 18:00